NicoNico Blog

Journaling for myselfです。

第二次世界大戦時にAIが戦争終結を早めた?〜映画『リミテーション・ゲーム』の実話〜

第二次世界大戦時にAIが戦争終結を早めた?〜映画『リミテーション・ゲーム』から見る数学者の実話〜

明日は履修している政治理論のエッセイの提出期限ですが、自分の中でベスト10に入る映画をレビューしようと思います。笑

 

リミテーション・ゲームとは2014年に公開されたある天才数学者の実話です。

国家情報機関で過去50年間はトップシークレットだったため、主人公アラン・チューリングが生誕100周年を迎えて、最近やっと公になり、映画化されました。

 

ーーーーーーーーーーー以下ネタバレ含みます。(映画を見た方、もしくはネタバレを含んでいても構わない方は見てください)ーーーーーーーーーーー

 

 

第二次世界大戦時は味方同士で通信する際、暗号化することが基本でした。

しかし、その暗号も簡単に敵に解読されては意味がありません。ドイツ軍が開発した「エニグマ」から毎日生成される天文学的とも言える数の中からただ一つの暗号を解読するマシンを作ろうと、アランをはじめとする天才暗号解読者たちが苦心し、開発に従事します。

毎日暗号を解読することでドイツ軍との世界大戦を早期終結させるというコンテンツですが、その過程で多くの哲学的問いが詰まった映画でした。
個人的にはアランの"普通でない"特性と彼が生きた時代背景を想像すると、いかにアランが孤独で苦しかったかが容易に想像できます。


そんな一人の苦しみを追体験し、数学者の感性を知れるのは、ビューティフルマインドと、ラマヌジャンの「奇跡がくれた数式」とこの映画だけだと思っています。それぐらい希少価値が高い。個人的には人工知能機械学習、コンピューターを日常的に使う全ての人、(もはや全ての人ですね。笑)に見てもらいたいです。

以下コンテンツに関する私の個人的な感想です。


ーーーーーーーーネタバレ含みますーーーーーーーー

アランをはじめとする天才暗号解読者たちは、ドイツ軍が毎日編み出す暗号を解読する「コンピューター」の元祖とも言われるマシンを作ろうと苦心しますが、一度開発すると、「それをいかに使うか」と言う問いに変わっていきます。
最初からすぐにそのマシンを使えば、ドイツ軍は暗号が解読されたとして新たな暗号を作るシステムを構築し、結果それまで解読マシンに費やしてきた長い年月が無駄になってしまいます。

そこで彼らは最小のコストで最大の成果があげれる作戦を統計的に解析していきます。つまりドイツ軍がいつどこを攻撃するかというすべての情報の中から、本当に力を入れるべき戦いだけをピックアップし、彼らの暗号システムがドイツ軍に解読されたと知られずに戦争終結に導こうというのです。


これは、ハーバード大学のMichel Sandel教授の"What is the right thing to do?"と言う授業の冒頭で問われる有名な哲学的問い「ブレーキ不能となったトロッコを運転するあなたは、この先二つの線路でそれぞれ働く1人と5人の労働者のどちらかを引き殺さないといけない」とほぼ同じ展開です。
明日助けられる人たちを見捨て、戦争の勝利のために注力すべき戦いで勝つ。それで戦争を終結する。

映画の中では、同じエニグマを解析するチームのメンバーの家族が乗る民間船が明日攻撃されるとわかっているのにもかかわらず見捨てられるシーンもありました。

 


命の重さを単に最終的な犠牲者数や数のみで比べることなど到底出来ないですが、功利主義的な観点で戦争を捉えるとそれが合理的な選択であることも否定はできません。

その結果は、みなさんのご周知の通りナチスが破れ戦争が終結しますが、そのことは同時に彼らの研究の終わりと、極秘任務であるためにその研究過程や研究結果を全て燃やすことを意味します。
しかも当時はLBGTが法律違反で投獄される時代で、アランは同性愛者であったために有罪判決を下されてしまいます。
彼は服役をま逃れるために、ホルモン投与して性的嗜好を変える選択をしますが、1年後に自殺未遂してしまいます。

今の時代を考えると、イノベーティブな研究をオープンに促進していきたかった研究者や、LGBTなどのマイノリティはすごく苦しかった時代だったと思います。
研究が軍事のために活用される。それはその国の国益のためだけで、一切外部に漏れない。
同性愛が認められず、自分が普通でないと孤独に陥る。
イノベーションとマイノリティが時代に認められず、その両方に属するアランは非常に苦しんだと思います。

コンピューターの基礎や、人工知能の概念を築いたアランが、もし時代に受け入れられ、真に世界から必要とされていれば、今のITの中心地はシリコンバレーではなく、イギリスがITの"City"にもなっていたことでしょう。

 

また個人的に、私自身は機械学習エンジニアになるために日々勉強する一介の学生ですが、コンピューターがない時代から人工知能の概念を用い戦争早期終結に貢献するシーンには大きく興奮しました。(暗号で毎日使われている言葉を予測する、統計的に解析し最小の労力で最大の効果を発揮するオペレーションズリサーチなど)

 

最近はシリコンバレーの企業やイーロンマスクがAIによる自律的殺人兵器の非開発の誓約書に署名しましたが、本当に技術が軍事ではなく、純粋に人類の平和と幸福のために活用されていくことを願ってやみません。