アルジャーノンに花束を
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チャーリイ。
彼を変えた人はなんと愚かなのか。
チャーリイ。
なぜ彼はかのような人生を歩まねばならぬのか。
チャーリイ。
彼は翻弄された。
チャーリイ。
彼に問いたい。
彼の人生をどのように彼は捉えているのか。
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知的障害だった彼、チャーリー・ゴードンが科学の実験台として知能を高める手術を受け、経過観察をされるお話。
知能が発達して情緒がそれに伴い発達したが、暫くすると知能のみが退行衰退していく。
知能が高まるにつれて、なぜ昔友達からいつも笑われていたのか、
なぜ母親にぞんざいな扱いを受けていたのか、
なぜ昔とった良心からの行動が気持ち悪がられたり煙たがられたりしていくのか、
理解できるようになっていきます。
その過程で彼が感じる憤りのない苛立ちや不満、ある種の虚しさをこの本は投げかけます。
タイトルのアルジャーノンは、彼と同じホルモン注射と手術を受けたネズミ。
物語初期ではチャーリーはアルジャーノンと同じ迷路を解くテストを受けせさられます。
そんなアルジャーノンも時が経つとどんどん退行していきます。
最初は奇妙で解せない兆候だったのですが、知能が高まり研究者並みの知識と知性を持ったチャーリーは自ら、自身の受けた研究の欠陥を示す仮説を証明すべく残された短い時間を使って研究活動に明け暮れます。
そして導き出す結論になんとか折り合いをつけて受け入れようとする主人公の心の葛藤も読み取れます。
アルジャーノンはただのネズミではありません。花束を添えて優しく寄り添うチャーリーの心の温かさ。
彼の過程を経過観察という形で追体験するのは、ゲーテの若きウェルテルの悩みと同じ手法です。
正直このような本は個人的には読みづらさがあったりするのですが、
チャーリーのどのような物語で幕を閉じるのか気になって読み進めました。
最後の結末の後にも彼の人生は続いていく。
そこをあえて記さず、知能が戻った彼の新たな人生がどうなっていくかの想像は読者に委ねられています。
久しぶりに読んだ小説。
このようなお話を作ることができる小説家は偉大だなと思うものです。